絶対零度より
低い温度状態をつくることができた、という記事が
ひろがっていましたが
どういうことでしょう?
「負の絶対温度」をもつ系とは何なのか
2013.1.9 12:30
ミュンヘン大学の研究者は、「負の絶対温度」をもつ系をつくり出すことに
成功したと発表した。その意味を解説。
とありますが、イメージがはっきりしません。
なお、この記事の下半分は、
宇宙物理学と関わる解説。
いまのところ、このような文脈の解説はこの記事だけです。
で、科学オタクのサロンに行ってみた。
タイトルの代替案募集中 部門より
ある Anonymous Coward 曰く、
ミュンヘン大学の研究者らが、絶対零度より
低温の量子気体をつくり出すことに成功したそうだ
(WIRED.jp の記事、DOI: 10.1126/science.1227831 より) 。
という話題になると「物理の法則が乱れる!」といった見出しをつけて煽る方のが世間的の流行に追従する感じでイイのかもしれませんが腐れてもわたしたちは /.Jer ということで、このあたりのコメントからのツリーに詳しいです、と phason 氏の解説に丸投げさせていただきます。生物物理計算化学者の雛の記事にも詳しいですが、ボルツマン因子に負の温度を与えた時のエネルギー分布 (エネルギーの高い状態の占有率の方が,エネルギーの低い状態の占有率よりも高くなる) を運動の自由度で実現した、ということらしいです。解説!
引用:
Re:なんなんだろう (スコア:3, 参考になる)
by phason (22006) on 2013年01月06日 23時36分 (#2301424) 日記
レーザーなんかと同じ反転分布です.
エネルギーの高い状態の占有率の方が,エネルギーの低い状態の占有率よりも高くて,ボルツマン分布で無理に表現すると温度の値として負を代入したのと同じと見なせる,というあれです.
それを運動の自由度で実現しましたよ,ってのが今回の報告になります.
例えば理想気体なんかを考えます.話を簡単にするためにx方向の速度だけに注目すると,どんなに温度を上げていっても統計力学的には(x方向の)速度がゼロの粒子が一番数が多くなります.温度が絶対零度に近ければほぼ全粒子の速度がゼロで,温度が上がって行くに従って徐々にx方向の速度の多い粒子も出現するようになる(ただしその数は速度の絶対値が大きい粒子ほど少なく,速度ゼロの粒子が一番多い)というのが熱力学の帰結です.
ところがこれをいろいろ頑張って粒子を操作してやって,「x方向の速度が(ほぼ)±1の粒子しか居ないような集団を作りました!」ってのが今回の報告です.そうするとx方向の速度がゼロの粒子(通常の温度分布では必ず数が一番多い)よりも速度が±1の粒子の方が多くなっちゃうんで,ボルツマン分布として記述すると温度が負として定義されるよ,と.
Re:負の絶対温度では重力が引力ではなくて斥力に (スコア:2)
by phason (22006) on 2013年01月06日 21時15分 (#2301340) 日記
>負の絶対温度では重力が引力ではなくて斥力になるってことですかねぇ。
違います.
あくまでも集団運動として,一部にエネルギーが集中する変な流れが出来る,という感じです.
例えば通常の集団ですと,
・エネルギーの高いものから低いものへの再分配が起こる
・結果として平均化する
となるところが,負温度の分布だと
・全体としてはポテンシャルの底に沈み込む
・その際の余剰のエネルギーの一部が,エネルギーの高い粒子に受け渡されさらにそいつらのエネルギーが高くなる
・結果,(集団の一部の)エネルギーの不均一性がさらに強まる
というような感じで.変な比喩ですが,コップから水をぶちまけると,大多数が落ちる代わりにそいつらを踏み台に上方に駆け上がっていく一群が居る,というか.
当然,「集団全体」としては重力で落ちていきますし,エントロピーなども増える方向で.
温度は、物質の分子運動。
ランダムに押し合い圧し合いしてるので、動いてないように
見えるんですね。
温度 :Wikipedia
温度(おんど)とは、寒暖の度合いを数量で表したもの。具体的には物質を構成する分子運動のエネルギーの統計値。このため温度には下限が存在し、分子運動が止まっている状態が温度0K(絶対零度)である。ただし、分子運動が0となるのは古典的な極限としてであり、実際は、量子力学における不確定性原理から、絶対零度であっても、分子運動は0にならない(止まっていない)。で、その分子がランダムじゃなくって、ある向きにそって
分子運動するようになると、『温度』の定義からは外れる、って話。
その外れた状況を計測する基準からすると『負の絶対温度』になるんですね。