2009年9月1日火曜日

オバマ大統領の医療保険改革が追い詰められつつある

Stethoscope

今、日本では政権交代が行われようとしていますが、
いち早く政権交代を行ったアメリカは最大の課題である医療保険改革に対し
何ふりかまわぬ反対攻撃をする共和党陣営にオバマ政権が苦しめられています。


オバマ医療保険改革にイデオロギーの逆風
      保険に入れない「医療保険難民」が4,600万人も


in JanJan News コラム【米国ワーキング・ウーマン報告】
米国で医療保険改革が大きな問題となっている。オバマ大統領は8月に連邦議会が休会する前に、改革法案のとりまとめを求めてきたが、反対論も強く譲歩せざるを得ない状況に陥っている

連邦議会は休会となり、各議員は地元に戻って状況説明及び有権者の声を聞くためのタウンミーティングを行っているのだが、そこに声高らかに反対意見を表 明する有権者たちが押し寄せている。共和、保守系団体が参加を呼びかけているため参加者の8割は改革反対派。「声高らか」どころか、反対意見を怒鳴りまく る参加者やヤジ攻勢などで紛糾する集会が後をたたない。

抗議活動の中には、改革推進派の民主党議員の名前を刻んだ墓石の模型を掲げたり、オバマ大統領の医療保険改革をヒットラーの政策になぞらえ卍マークを民主党議員の看板にスプレーしたり、民主党議員の人形をリンチしたりと、ヒステリックな行動も見られる。

米国の場合、65歳以上及び低所得者以外は、民間の医療保険に加入するしか道はない。しかし民間医療保険は掛け金が高くなる一方で、経済的に加入できない人が4,600万人近くいる。また、保険会社が既往症のある人の加入を拒絶する場合も少なくない。


医療費や保険掛け金を下げて、こうした無保険者が医療保険に加入できるようするというのがオバマ大統領の求める改革である。その柱の一つに、民間医療保 険だけでなく、公的医療保険制度もつくり、競争の原理で医療保険のコストを下げることが含まれている。公的保険を主体にしている日本人にはわかりにくい が、これが大きな火種なのである。

 相互扶助の原理で保険コストを下げるなら、一元的な公的保険が理想的というのが民主党の本音である。しかし米国には、共和党をはじめとし、政府管理や社 会主義を極端に嫌う人が多い。オバマ大統領もそれを理解しているため、一元的な公的保険は求めず、選択肢の一つとして公的保険制度をつくるという妥協を示 している。

 しかし共和党は利益を追求しない公的保険と、民間医療保険会社が競争すること自体が無理なので、どんなものでも公的保険ができれば、民間医療保険は淘汰 され、結局は政府が国民の医療を管理し、その費用は税金として国民に回ってくるという危機感を感じている。同時に、こうした危機感を国民に煽ることで、民 主党に流れた人々を、共和党に呼び戻すチャンスと捕らえているのだろう。

保守系の評論家はあらゆるメディアで、「オバマ医療改革は医療の社会主義化で、アメリカをソ連のようにするもの」とか、「政府が医療を管理する民主党の 政策は、ヒットラーの政策と同じ」とか、「政府保険のイギリスやカナダでは、待ち時間が長くて、医者にかかる前に病人は死んでしまう」といった論調を展開 している。

連邦下院の医療改革法案の中に、「死期に近い患者が、医師と今後の対応方針を話し合う場合も、診療報酬の対象とする」とあるのだが、サラ・ペイレン元ア ラスカ州知事をはじめとする反対派は、これを政府が「死刑宣告委員会」をつくり、誰が治療を受けられ、誰を放置するか決めるもので、オバマ改革は「邪悪な 提案」だと論じている。

いまや米国で展開されているのは医療改革に対する議論ではなく、ヒステリックなイデオロギーの対立である。人は未知なものに不安を感じる。経済的な痛み を感じている市民は、政府に対する不満を高めている。オバマ政権は遅まきながら、正しい情報を市民に理解してもらおうと自らタウンミーティングを開き、 ウェブサイトで情報を流しているが、ヒステリックになっている人々に耳を傾けてもらうのは容易ではない。

15年前、クリントン大統領時代の医療保険改革は、秘密主義で進めたことで国民の反感を買い失敗した。皮肉なことに、この教訓を生かしてオープンに進め ているオバマ医療改革は、言論の自由を盾にとったデマ攻勢で、頓挫しそうになっている。先週は医療従事者のボランティアによる無料診療イベントに、多数の 「医療保険難民」が徹夜で並ぶ光景がテレビのニュースに流れていた。ヒステリックな人々の目には、こうした情景は映らないのだろう。

在米のがんサバイバーである私も、職を失えば、今は会社が提供してくれている医療保険も無くなる。何かが変わらない限り、低所得者でない65歳以下のが ん患者が加入できる医療保険など、米国にはない。イデオロギーのためではなく、人のための医療保険改革の議論に進める日を希望せずにはいられない。
この医療保険改革に関する問題点を丁寧に整理した記事はこちら。


医療保険改革をめぐる5つのウソ
  in ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
The Most Outrageous U.S. Lies About Global Healthcare

同一内容の記事:
The Most Outrageous U.S. Lies About Global Healthcare
in Foreign Policy

オバマの医療保険改革案に対する賛成派と反対派の議論がヒートアップしているが、その中にはとんでもない事実誤認もある
2009年08月21日(金)18時01分
アニー・ラウリー、マイケル・ウィルカーソン

以下、引用

医療保険改革について議論するタウンホールミーティングには賛成派、反対派の市民が集まった(11日、カリフォルニア州) Danny Moloshok-Reuters


この夏、アメリカ連邦議会ではクリントン政権以来となる本格的な医療保険改革が議論されている。これに伴って世論も沸騰し、政府が国民の生死を決める「デス・パネル(死の審査会)」になるという批判から、アメリカ独自の医療制度の強さが失われるといった慎重論まで、様々な主張が繰り広げられている。


しかしその議論の過程で、特に外国の医療保険に関してかなり間違った言説がまかり通っている。それは同盟国のイギリスやカナダをはじめとした、世界最高レベルの医療保険制度に関しても例外ではない。


「ホーキング博士は治療を受けられない」


ウソ 筋萎縮症を患っている理論物理学者のスティーブン・ホーキング博士や、脳腫瘍にかかったエドワード・ケネディ米上院議員は、政府が医療制度を運営するイギリスでは治療を受けられない。


ウソつき ビジネス情報紙「インベスターズ・ビジネス・デイリー」は7月31日付けの社説で、「ホーキング博士のような人はイギリスでは生きられない。国民保健サービス(NHS)は身体障害のあるこの賢人の命に価値はないと判断するだろう」と主張した。


上院財政委員会の共和党トップ、チャールズ・グラスリー上院議員は地元アイオワ州のラジオ局とのインタビューで今月5日、「脳腫瘍があるケネディ上院議員は、イギリスでは治療を受けられない。77歳になったら価値がなくなると見なされるからだ」と発言した。


真相 両方ともデタラメ。


ホーキング博士はイギリスの病院で集中治療を受けており、英ガーディアン紙に対して「とても高度な治療を受けている。NHSがなかったら私は生き残れなかった」と語っている。


ケネディのケースでは、確かにイギリスでは治療や薬物投与の費用対効果を評価してから治療するかどうかを決める。そしてNHSは、症状や治療費、治療後の健康状態などを考慮して治療や薬物投与を行わないこともある。しかしイギリスの医師やNHS関係者によれば、ケネディのケースだと年齢に関係なく手術や放射線治療、化学治療といった高度な処置を受けられるという。


治療が妥当かどうか判断する英国国立臨床研究所(NICE)の理事長はガーディアン紙に対し、ケネディがNHSで治療を拒否されるという話は「間違っているし、我々がこれまで推奨してきた医療からは考えられない」と語っている。


「カナダ人は緊急手術のためにアメリカに来る」


ウソ 政府が運営する医療制度が貧弱なため、カナダの患者は金を払ってアメリカに緊急手術を受けにくる。


ウソつき 民間患者団体「ペイシェンツ・ユナイテッド・ナウ」は、カナダ・オンタリオ州住民のショナ・ホームズが登場するテレビ広告を放映。ホームズは「私は脳腫瘍を乗り越えた。しかしカナダの公的医療を受けていたら死んでいただろう」と語っている。彼女はアメリカに救命手術を受けに来たのだという。


今年6月、共和党のミッチ・マコンネル上院院内総務は「心臓バイパスの手術を受けるのに、オンタリオ州では半年も待たなければならないこともある。アメリカだったらすぐできる」と言った。


真相 ホームズは確かに、世界最高の病院の1つと言われるミネソタ州のマイヨー・クリニックで10万ドルを支払って治療を受けた。しかし病院のサイトによればホームズがかかったのは脳腫瘍ではなく生命にかかわらない良性の腫瘍だった(この病院は非営利団体で、医療保険改革を支持している)。


一般的にカナダ人はアメリカに医療を求めない。カナダのシンクタンク、フレイザー・インスティトゥートによると、カナダとアメリカの政府はどちらもGDP(国内総生産)の7%を医療費につぎ込んでいる(アメリカの場合、民間支出を足すとGDPの16%になる)。


しかしカナダでは国民がすべての医療費と処方される薬の費用の一部を賄われている。一方のアメリカでは4700万人が無保険のままで、毎年数十万人が医療費を払えずに自己破産している。


カナダでは治療を待たされることはあるが、緊急手術を待たされることはない。マコンネルの心臓バイパスの話は間違っている。カナダの医療当局によれば、07年にオンタリオ州で緊急でないバイパス手術を選択した患者が約61日間待たされたケースはあった。こうしたまともなデータはアメリカでは公表されていない。


「欧州の医療制度は公営だから機能している」


ウソ ヨーロッパ諸国は長らく公営医療制度を続けてきた。だからこそ医療が機能している。


ウソつき 民主党のハワード・ディーン元全国委員長は最近、「ヨーロッパ諸国が公営医療制度を維持しているのは、第二次世界大戦で実質的に医療制度が崩壊したのがきっかけだった。一度この方法にしたら、気に入って後からやめられなくなった」と発言した。


真相 あまりに一般化しすぎ。


ヨーロッパには様々な医療制度と医療保険システムがある。すべてのヨーロッパ諸国が公営医療制度をもっているわけではない。カナダやフランス、ドイツでは医師や病院は民間だ(イギリスのNHSやアメリカの復員軍人援護制度では、政府が医師に給料を支払い病院を運営している)。


ヨーロッパ諸国は戦後、一様に医療制度改革を行ったのではなく、各国がそれぞれ機能的な制度を模索してきた。例えばスイスは94年、オランダは06年にアメリカが現在検討している制度──病院や医師、保険機関は民間として残しつつ、政府が制度を高度に管理し、医療保険は義務化して政府が財政支援する方式──に移行した。




「カナダとイギリスの患者に治療選択権はない」


ウソ カナダとイギリスでは、個人が医療を選ぶ権利が失われている


ウソつき 保守系政治団体クラブ・フォー・グロース、共和党全国委員会(RNC)


真相 RNCとクラブ・フォー・グロースは、カナダやイギリスのように政府が健康保険制度を支配することで、医師と患者の間に「官僚主義」が入り込むと警告している。


クラブ・フォー・グロースの広告は不吉な口調で次のように主張する。「2万2750ドル。イギリスの政府高官は6カ月の命の値段をそう決めた。彼らの社会主義的システムの下では、医療費が高くつけばつくほどあなたは不運だった、ということになる」


これは事実と異なる。カナダやイギリスの患者は自分で治療方法や医師を選択することができる。


イギリスでは、2万2750ドルという数字は「6カ月の命の値段」ではなく、1つの薬では効果がないとNICEが判断する基準の上限だ。だが例外はあって、イギリス人は民間の保険会社に入る選択肢もある(アメリカのように支払い能力によって変わるが)。アメリカでは、医療保険は高額な医療費を避けるためにあるが、医学的知識が限られているため、患者はもっとも高価な選択肢が最良の治療だと考えがちだ。


NICEの代表はガーディアン紙に対して、この広告は「限られた財源をどう理性的に分配するかという問題に対する、ひどく間違った解釈だ」と語った。


「アメリカの医療制度は世界最高だ」


ウソ アメリカの医療制度が世界でもっともすばらしい。


ウソつき 多くの歴代大統領、政治家、ジャーナリスト、評論家、そして一般のアメリカ市民


真相 アメリカの医療保険制度には他の国と大きな違いがある。それはコストだ。アメリカは総額でも、GDP比でも、1人あたりの金額でも、世界中のどの国よりも多くの医療費を使っている。


いろいろな測定基準で見ても、アメリカの健康保険制度が世界的にも優れているという主張は間違っている。アメリカは世界保健機関(WHO)や、非営利団体コモンウェルス・ファンドのランキングで1位ではない。適用範囲、利用方法、患者保護、効率性、費用対効果のどれをとってもアメリカの医療制度は最良とは言えない。癌、心臓病、糖尿病といった疾患別でも年齢別でも、平均余命、慢性疾患率や肥満率といったデータでもよい結果を出していない。


ではどこの国がトップにくるのか? 大抵の場合はフランス、スイス、イギリス、カナダ、そして日本だ。WHOのランキングでアメリカは38位に位置している。
私は、オバマ大統領の公的医療保険導入を応援しています。
しかし、オバマ当選の時の学生運動システムがなぜ機能していないのか・・
機能すれば、大学生が「オバマに投票して!」と祖父・祖母に訴えた方法が使えるのですが。

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